三菱電機がサービス事業強化に向けてIoT、ビッグデータ、AI 研究開発を加速

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三菱電機は2016年2月17日、「未来社会への貢献」をテーマに第33回研究開発成果披露会を開催し、同社研究所で開発を進める4分野24件の開発技術を披露した。総じてコンポーネント・システム機器中心の事業から、これを核にして導入、運用、保守、サービス事業へと事業領域を拡張展開する方針を打ち出し、その遂行のために、研究開発においてはIoT、ビッグデータ、人工知能の活用を推進する。分野別には、IoT で7件、スマートモビリティで5件、快適空間で6件、安全・安心インフラで6件の開発を紹介した。

デジタル・コミッショニング

IoT 分野では、FA コントローラで現実の生産ライン上の部品やセンサの動きをシーケンス制御するとともに、同じコントローラ内でこれと同期した仮想ライン上で部品やセンサの動きをシミュレーションする仮想化技術を用いて、生産ラインの立上げ・変更時の運転確認状況を効率化する次世代ものづくり検証技術を初披露した。これまでのデジタル・コミッショニング技術と比較して、従来はパソコン上のシミュレータを用いてシミュレートしていたために、コントローラ制御とシミュレーションとのあいだに遅延が発生していたが、今回の技術では、同一のコントローラ内で同期するため、遅延がほとんど発生しないという違いがある。

これを用いて従来は再現が難しかったチョコ停などの運転エラーをFA コントローラ内の仮想ラインで擬似的に発生させ、現実のラインに反映させることで、現場で生産ラインを立ち上げる場合の調整機関を最大75%短縮でき、変種変量生産の実現に役立つ、という。

コンパクトな人工知能

また、推論処理の演算量を減らして省メモリ化することにより、人工知能を容易に車載機器、産業ロボットや工作機械などへの組込みFA機 器、監視カメラなどに搭載できるコンパクトな人工知能を開発し、2017年度以降の製品化を目指す。今回の開発技術により、推論精度を保ったまま、推論処理の演算量・使用メモリ量は90%削減でき、コンパクト化できる。これにより、従来はネットワークを介して大規模サーバを必要とした高度な推論が、高いセキュリティ環境下で高速処理できるローカライズされた人口知能によってエッジ・コンピューティングが低価格に実現できるようになる。例えば、監視カメラは、従来の犯罪・違反等の監視用途に加え、人物行動認識等による集団内での徘徊老人、病人等のモニタリング等への用途拡張が目指されている。

このほか、IoT 利用の本格化に向けて安価なハードウエア構成で100兆件規模のセンサデータの蓄積、高速検索・集計を実現する高性能センサデータベース(2月3日付け既報)は2016年度にシステムに組込んで出荷を開始する予定であり、クラウド上のビッグデータのIP 管理への活用手段として期待される暗号化した情報を複号せずに検索でき特定のアクセス権を付与して管理できる部分一致対応秘匿検索基盤ソフトウエアは、2017年度から同社製品に適用の予定である。また、ワイヤレス通信データ量の急増に対して逼迫が予想される無線通信帯域を効率的に活用するための伝送速度20Gbps以上の5G 向けマルチビーム多重技術の開発は2020年以降の5G 実用化に備える。

サイバー攻撃検知技術

このほか、安心・安全インフラ領域では、標的型サイバー攻撃への対応策として、1日あたり100万種以上増えるといわれる数億種類のウイルスの活動を、50個程度の攻撃手口に分類し監視して検知するサイバー攻撃検知技術を紹介した。この開発により、従来は数億のウイルス個々を見分けて検知していたため見逃してしたサイバー攻撃の検知精度を向上できる。さらに一端入り込んだウイルスのウエブ潜伏通信やユーザID密偵活動などを高精度に検知することにより、通信経路の遮断と防護を可能にする。攻撃手口としては、年間10種程度の新手が予想されるが、これらには分析サーバ上にインストールした同アプリの追加更新により対応する、という。2017年度の事業化を計画する。(Shin Kai)