アズビル、高圧ガス保安規制のスマート化への対応をテーマにセミナー開催

Submitted by Bob Mick on

アズビルは2016年1月27日、現在経産省が審議中の高圧ガス保安規制のスマート化とこれに向けたインダストリアルIoT 型プラント運転管理に関するセミナーを、東京で開催した。石油・ガス、石油化学業界を中心に24名が参加した。今回のセミナーでは、第一部で同社アドバンストオートメーションカンパニーマーケティング部の高井努氏が「高圧ガス保安規制のスマート化に向けたIndustrial IoT 型プラント運転管理」と題して、高圧ガス保安規制の新局面と、これに対応して自主保安の高度化に役立つアズビルの技術ソリューション提案を行い、第二部で同カンパニーグローバル営業本部の米倉貴洋氏が「ビッグデータによる機器異常予兆オンライン検知」と題して、同社のビッグデータ活用による計装機器異常予知検知ソリューションBiG EYES とそのケーススタディの紹介を行った。

高圧ガス保安のスマート化と新認定事業所制度

経産省商務流通保安グループ高圧ガス保安室は、産業保安規制のスマート化の一環として、高圧ガス保安法の制度的な検討を開始する中で、ビッグデータ、ロボット技術、高度なリスクアセスメントの活用などを高圧ガスの安全管理に取り込んだ企業に対して、規制上のポジティブ・インセンティブを与えることを現在検討中で、その動向が業界から注目されている。

2015年3月に保安分科会で開始された議論では、高圧ガス保安のスマート化に向けた検討の中に、自主保安の高度化を促す制度の検討が含まれている。この内容には、新技術の活用により、保安水準を向上させるため、ビッグデータ、ロボット技術、高度なリスクアセスメントといった新たな知見・手段等を取り入れ、レベルの高い自主保安(異常状態の予知/予測の実現、および状態基準等の予防保全)を実現している事業者に対して、ポジティブ・インセンティブを導入・強化し、規制を差異化することが盛り込まれている。

そのインセンティブの具体化に向けて、新認定事業所制度が検討されている。現行の規制では、設備停止を伴う保安検査を1年に1度実施することが課される非認定事業者と、同保安検査を4年に1度実施することが課されている認定事業所(現在全国に46社86事業所)の2段階で構成されているが、新認定事業所制度ではこれを4段階に拡充し、認定事業所の裾野の拡大を企図した2年に1度の保安検査が課されるベーシック認定事業所(仮)、およびビッグデータ活用等高度な保安対策を実現する事業者向けに、保安検査が6年に1度課されるスーパー認定事業所(仮)の追加が検討されている。

また、新制度の確立に並行して、保険会社・格付け会社等との連携によって市場評価を高める制度が検討され、実現に向けた動きがあるという点でも注目される。検討スケジュールとしては、3月に開催予定の高圧ガス小委員会を経て3月末にも検討成果の認定制度への反映が図られ、4月以降の2016年度に新認定事業所制度を開始し、2017年度に制度の段階的見直しが行われる予定である。

スマート化とIoT・ビッグデータ等の活用

既存の認定事業所にとっては、新制度におけるスーパー認定事業所の基準が関心を集める。これを検討中の保安分科会は2015年12月の小委員会の会合で、近年の産業保安に関する国内化学プラントの爆発火災事故および台湾高雄市内のガス爆発事故からの課題と対応の方向性について検証し、さらに具体的な対応技術の検討を行った。技術検討では設備の腐食状況や微細な傷を把握するセンサ技術例として、インテリジェントピグとアコースティック・エミッションセンサを、設備の動作状況から故障・寿命を予測するビッグデータ・AI 技術例として、スマートバルブ/HART 通信を活用した高度センシングと腐食解析予測モデルを、また運用・管理面の課題への対応例として、ソフトセンサ、多変数分析、近未来予測モデル/アラームマネジメント、非定常/異常時運転支援システム、などを採り上げ、検討した。

アズビルの技術提案

これらの検討の動向を踏まえて今回のセミナーでは、規制の検討の要点を整理したうえで、アズビルがすでに開発し、提供している自主保安の高度化のための技術ソリューション提案を行った。これには、高度センシング領域では、高機能スマートバルブポジショナによる調節弁、緊急遮断弁のPST(パーシャル・ストローク・テスト)動作検証による状態基準保全と安全確保、ビッグデータ分析領域では、ビッグデータによる計装機器異常予兆オンライン検知、イベントビッグデータ相関解析による運転課題の抽出、また予測領域では、DCS アラームシステムの限界を超えた重要な温度、圧力など、プロセス値の未来変動予測などを紹介した。

同セミナーの参加者からは、「新たな認定事業所制度の具体的な基準がまだ見えないから対応待ち」「従来実施してきた多重防御のシステム内のデータを扱うのか、その外のデータも取り込むのか、従来のデータを扱う場合、従来の保全システムと何が違うのかが不明確」「ビッグデータ活用ありきの議論では何が本当にプラントの保全に役立つのかの本質的な課題が解決されない」など、高圧ガス保全規制の動向をさらに見守りたいという意見が多く聞かれた。(Shin Kai)