ARC インダストリアル・フォーラムが開幕、 オープンでセキュアな次世代制御システムを議論

Submitted by Bob Mick on

米フロリダ州オーランド(Orlando)で2月8日からワークショップを開始した第20回ARC インダストリアル・フォーラム2016 は、9日、基調講演を催し、従来のDCS に替わるオープンでセキュアな次世代制御システムのシステム構築を計画するエクソンモービル(ExxonMobil)がプロジェクトの概要を公開して、議論を呼んでいる。

ARC 社長のアンディ・チャサ(Andy Chatha)は、開幕の基調講演で、業界に変革期が訪れ、ARC フォーラムの700名強の参加者の構成では初参加者の比率が増加していることを紹介。またデジタル・トランスフォーメーションに向かうプロセス・プラントの最新の動きとして、先進技術の柔軟な取込みを可能にする次世代オートメーションの嚆矢となる可能性を持ったエクソンモービルの開発プロジェクトが今回のフォーラムで初めて公開されることを紹介し、これを議論することを参加者に求めた。また、「航空機業界で、製品開発の複雑性を克服するために統合技術が開発され、そこからプロセス業界が学ぶことがある」と語り、エクソンモービルとプロジェクトの総合管理で提携したロッキード・マーティン(Lockheed Martin)の担当者が会場に来場していることも紹介した。

これに続き、「変革期の業界(Industry in Transition)」と題して、エクソンモービルから2人の講演者が登壇した。エクソンモービル・デベロップメント、ファシリティーズI&Eマネジャーのサンディ・ヴァッサー(Sandy Vasser)氏は、同社が従来型のDCS を中心とした制御システムの更新期を迎えている事情を背景として、技術更新に手間とコストがかかり過ぎる旧来の制御システムの課題を抽出。採用する新システムが、従来の安定操業と安全性を確保しつつ、今後数十年にわたり、加速化する技術革新から取り残されることなく、最新技術を取込み易いオープン性を備える必要を指摘した。また調達もアプリケーションを含めDCS サプライヤに縛られる従来の事業環境を改め、グローバルで技術と価格双方で競合力のある先進製品を自由に調達できる環境を目指している。

新たな手法として構想されているのは、標準化を基本としカスタム化の必要を減らすこと、複雑性の排除、プロセスの削減、簡素化、あるいは自動化の追及、などである。これに即して技術要件として、スマートI/O、仮想化、SIS ロジックソルバの採用、オートメーションと電気系統のシームレス統合、複数のディスクリート信号を単一アナログ信号化する標準アセンブリやパッケージ・インタフェース・ソリューションの簡素化、ワイヤレス・フィールド機器の採用等を紹介した。またサプライヤ側に対して、システム・アーキテクチャの簡素化、サイバーセキュリティの設計組込み、アラームシステムの改善、HMI グラフィックス開発の単純化を求めた。

これに続きエクソンモービル・リサーチ・アンド・エンジニアリングのチーフ・エンジニア、ドン・バージアック(Don Bartusiak)氏は、最終的にはサプライヤから商用化され、広く業界で活用されることを目指す新システムの具体的な開発仕様とスケジュールを紹介。ロッキードマーチンとの提携に関しては、同社が仮想化技術を駆使する航空機開発のコンソーシアムFACE(future Airborne Capability Environment)の中核企業であり、リアルタイムで高可用性を備えたオープンシステムの設計、導入に実績があることを説明した。

同氏によれば、オープンシステムのアーキテクチャのビジョンには、ネットワークのバックボーンとなるリアルタイム・サービスバスを中軸に、従来のDCS、アナライザ、装置モニタリング、安全システム、無線ゲートウェイ、PLC 機能、さらに新たにI/O プロセシングや規制制御、アプリケーション・ホスティング機能を備えるDCN をこのバスに連携させる。上位系では、従来の事業プラットフォーム(ITデータセンタ)に加え、あらたに仮想化のためのオペレーション・プラットフォームとして高可用、リアルタイム、高度コンピューティング(RTAC)プラットフォーム(OTデータセンタ)を設ける。これらの要件を満たすサプライヤからの提案受付を開始し、今年の12月には設計及びプロトタイプの構築を実現したい意向である。

このほか基調講演では、ジョージア・パシフィック(Georgia-Pacific)、イノベーション&オペレーション・エクセレンスVP のマイケル・キャロル(Michael Carroll)氏が、「イノベーションの要諦」をテーマに発表した。(Shin Kai)